障害者の福祉サービスでは、自立支援が重要視されます。
ところで障害者の場合、何に対する自立を促しているのでしょうか?
また、現在の福祉サービスにどのような影響を与えているのでしょうか?
今回は、自立支援の概要と障害者自立支援法について解説します。

自立支援の概要

自立支援とは、文字通り自立を促す支援のことを指します。
そして、障害者の場合の自立は、就労ができることを意味します。
障害者の場合、様々な場面でサポートが欠かせないのが現実です。

日常生活や社会生活で必要なサポートが受けられなければ、自立して生活を営むことができません。
そのためには、欠かせない概念なのです。
この概念の下、障害の内容や程度に関わらず、自分で必要な福祉サービスを利用することができます。

この概念が定着したのは、障害者自立支援法の制定がきっかけです。
現在は改正を重ねた結果、障害者総合支援法という名称に変わっていますが、その前身ともいえる法律になります。
これは、自立という考え方を確固たるものにした法律だと言っても過言ではありません。

障害者自立支援法の内容ともたらした影響を学ぼう

ここからは、自立支援の考え方を明確にした障害者自立支援法の内容をいくつかの項目に分けて解説します。
解説する際の流れは、以下の通りです。

  • 法律を理解するための5つのポイント
  • 5つのポイントが重視された背景
  • 障害者の自立を促すために具体化された内容
  • 法律内容における課題

上記の内容を、早速見てみましょう。

法律を理解するための5つのポイント

本法律を理解するために、以下の5つのポイントを確認します。

  1. 利用者本位のサービス形態であること
  2. サービス提供主体の一元化
  3. 支給の決定手続きの明確化
  4. 就労支援の強化
  5. 安定的な財源の確保

上記5つのポイントは、障害者総合支援法でも継続して大切にされている部分になります。
この当時、全ての内容が画期的だと注目されました。
このようなポイントがあることによって、障害者や障害児が地域社会で保護されるのでなく、自立して生活できるための支援事業が充実することになったのです。

また、障害の種類に関わらず共通の福祉サービスが利用できるようになったことで、支援の選択肢が広がったとも言えます。

5つのポイントが重視された背景

ところで、5つのポイントが重視されたのは、その前に導入されていた支援費制度の課題にあります。
支援費制度が始まったことは、障害者福祉にとって大きな変化の一歩でした。
しかし、実際に施行されると、現状とのミスマッチが発生したのです。

その一つには、障害の種類によって受けられるサービスが異なっており、地方自治体ごとにサービスの質が違っていたことが挙げられます。
それと同時に、障害者が就労したいと考えていても、サービスの提供体制が不十分で必要な人に行き届いていませんでした。
そのため、福祉サービスを利用したいと思っていても、制度が上手く機能できていなかったのです。

さらに、問題はこれだけではありません。
支援を受ける際には支援費が受け取れるのですが、どのように支給が決定されるのか、その判断基準が明確でなかったのです。
現在の福祉サービス関連の制度では、支給額や対象者の条件が明確化されており、決定までのプロセスが不明確になっていません。

しかし、法律の施行前までは全国一律の判断基準が設けられていなかったために、地域差が生じていたのです。
以上の視点から考えると、確かに全ての障害者が安心して利用できる制度ではありません。
このような課題の解決を前提に、障害者自立支援法が設けられました。

障害者の自立を促すために具体化された内容

ここでは、障害者の自立に向けた内容について詳しく見ていきましょう。
自立に向けたサービスは、2つの柱から成り立っています。

・自立支援給付
・地域生活支援事業

自立支援給付は、障害者の個別事情に合わせた給付サービスの提供を行うものです。
具体的な種類には、介護給付、訓練等給付、自立支援医療、補装具が挙げられます。
介護給付は、主に生活面の悩みを解消してくれるサービスになり、ショートステイやホームヘルプ等が対象になります。

自立支援医療の代表例には、精神通院費の公費負担が挙げられます。
これらは、利用者でなくても存在を知っている人が多いでしょう。
そして、就労に関わるのは主に訓練等給付になります。

訓練等給付には、就労移行訓練や就労継続訓練、グループホーム、自立訓練のサービスが挙げられます。
就労は仕事だけでなく、日常生活が送れるかどうかも関係してきます。
全てのサービスは、密接に関わっていると言っても過言ではありません。

以上のような自立支援給付は、原則9割が給付、1割が自己負担の設定で利用できます。
この費用負担の内容が、後に大きな問題になることを頭に入れておいて下さい。

そして、もう一つの柱となる地域生活支援事業は、地域の特性に応じて取り組んでいる支援事業になります。
具体的な内容には、相談やコミュニケーションの支援、移動支援、居住支援といったサービスがあります。
地域生活支援事業はお住まいの自治体によって、柔軟な対応がされているため、ニーズに合わない一方的なサービスの提供を行いません。

このように障害者向けのサービスが体系化されたことで、地域間の格差の解消が計られました。

法律内容における課題

実は、障害者自立支援法には訴訟に発展した課題がありました。
それは、利用費用の1割負担にあります。
先駆けとなった支援制度の場合は、必要なサービスに応じた支給を行ったことで、経済的な負担を軽減していました。

しかし、社会的な医療費の負担が増えている当時の状況から、利用したサービスに応じて一定の負担をする応益負担の考え方が導入されたのです。
利用者に求められるのは1割だけだから、もしかするとそこまで大きな負担にならないと考えるかもしれません。

ですが、重い障害を抱えている障害者のことを考えてみて下さい。
色々なサポートが必要な場合は、いくら利用料が1割負担であっても積み重なると大きな金額になってしまいます。
さらに、そのような人が仕事をして一定の収入を得ているとは限りません。

特に、寝たきり等でサポートが常に必要な場合だと、働くこと自体が困難なこともあるでしょう。
その結果、サービスの利用料が支払えないのでないかと、大きな問題になりました。
また、問題はこれだけではありません。

サービス利用料が支払えなくなった際は、最終的に生活保護の申請をしなければならないのです。
生活保護は、最低限の生活を営む上で不可欠な制度です。
しかしながら、福祉サポートの利用料の支払いが困難で生活保護を利用する事態は、果たして自立と言えるのでしょうか?

今回解説している法律は、障害者が自立して社会生活を営むことの実現を目標にしています。
その考え方から則ると、生活保護に頼って生活するというのは自立だと言えません。
むしろ、生活が困窮した時の最終手段の利用を促されていますから、自立から遠ざかってしまいます。

このような経緯から、法改正が促され、現行制度のような費用設定が設けられたのです。

ここまで少々難しい話をしてきましたが、自立支援は決まった事業所でしか行えないものではありません。
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