障害を抱えていると、働くことが困難な状況になりがちです。
しかしながら、障害者も社会の一員ですから、収入を確保するだけでなく、仕事を通してやりがいを見つけることを諦める必要はありません。
今回は、障害者ならば知っておいて欲しい、就労支援についてご説明しましょう。
自己実現を果たすために設けられている就労支援
そもそも就労支援がどのような仕組みなのか、まだ理解していない人もいるでしょう。
まずは、理念や仕組みについてご説明します。
ポイントとなるのは以下の2点です。
・想定されている理念
・就労できること
様々な人が対象になっていますから、知っておいて損はありません。
各々について詳しく見ていきましょう。
想定されている理念
就労支援は、何らかの事情から就労が困難な人に対して、無事に就労ができるように国がサポートすることを示します。
就労が困難な人とは、障害を抱えている人を始めとして、難病を抱えている人、高齢者、経済困窮者が挙げられます。
これらの人には、ある共通点があります。
それは、就労が困難なだけでなく、社会との繋がりが非常に大切な人たちであるということです。
なぜなら、社会との繋がりが途切れてしまうと、本人だけでなく、家庭ごと孤立してしまう可能性があるからです。
そうなると、受けられるべきサービスの存在を認知できず、問題解決ができないまま時間だけが過ぎていってしまいます。
これは、社会生活を営む上で大きな課題です。
回避するためには、就労を通して自分の生活を豊かにしたり、自己実現ができたりするようなサポートを行うことが望ましいのです。
豊かな生活の実現は、収入面が確保していることだけではありません。
そのサポートの門戸は、大きく開かれていると言えるでしょう。
ポイントになるのは就労できること
ここで、就労支援のポイントとなる、就労の意味について考えてみましょう。
就労支援では、就職前のサポートだけでなく、就職後の相談まで対応しています。
これは、安心して就職後も働き続けるために大切なサポートになります。
障害者の多くは、仕事が見つかったとしても、その後の環境で躓くことが少なくありません。
例えば、業務内容のミスマッチや良好な人間関係が構築できないことが挙げられます。
その際に相談できる人や場所がなければ、退職を繰り返してしまい、1つの職場に定着することができません。
これは、長く働ける環境を自分で整えるためにも、活用できる仕組みになります。
障害者への支援が目的~障害者総合支援法とは?~
ところで、就労支援には根拠となる法律が存在します。
それが、障害者総合支援法です。
ここでは、法律の内容について3つの視点からご説明しましょう。
・障害者福祉の変遷
・理念や目標
・福祉サービスの利用料の設定
土台となる法律のことを知ると、サポートの重要性が改めて理解できるはずです。
障害者福祉の変遷
そもそも障害者総合支援法は、2013年に施行された法律です。
それ以前にも同じような法律が存在しており、それを見直していった結果登場した法律になります。
障害者総合支援法のきっかけとなる法律は、2003年に公布された支援費制度になります。
これは、現在では一般的な障害者が利用する福祉サービスを自分で選択できるようにした法律になります。
ですが、自分で利用するサービスが選択できるのは昔からあったと思う人もいるでしょう。
実は、そうではありません。
支援費制度が公布されるまでは、障害者に必要なサービスを行政側が選択していたことが一般的でした。
この状況に、大いに問題があったのです。
それは、行政側が決定し提示したサービスであるため、障害者本人の困りごとが一致しない、選択肢がなかったことです。
自分にあったサポートが受けられないと、いつまでも課題の解決ができません。
さらに問題として考えられていたことは、行政主導であることでした。
民間企業等の参入がなかったため、福祉サービスの質が上がらず、停滞した状態が続いていたのです。
このような課題を解決するために、支援制度や後2006年に障害者自立支援法が施行され、現在の障害者総合支援法に至っているのです。
自分に合ったサポートを選べる現在の状況は、障害者福祉の変遷があったからこそ実現できたと言えるでしょう。
理念や目標
法律の理念や目標は、障害者や障害児の基本的人権が守られつつ、自立した社会生活を送る事ができるようにする点にあります。
しかしながら、障害者にはサポートが必要となる度合いが、人によって異なります。
必要なサービスを見極めるために調査を行い、障害支援区分を設けているのです。
本法律で対象となる人は、法律で規定されている身体障害者や知的障害者だけでなく、精神障害者、難病のある18歳以上になります。
特に難病を抱えている人に関しては、従来から制度のグレーゾーンになることが多く、しかるべきサポートが受けられないままでした。
そのような人たちも、社会の一員であることに変わりありません。
その影響から、法律の条件さえ満たしているならば、難病を抱えている人たちも必要なサービスを受けられるようになったのです。
これは2000年代初めに提唱されたノーマライゼーションの理念が、徐々に社会に浸透してきた結果だと言えるでしょう。
また、精神障害者の中には発達障害も含まれていますので、障害と言っても多様な内容をカバーしていることになります。
昨今では、発達障害が原因で仕事に困難を抱えている人も少なくありません。
法律でカバーしている障害には、目に見えづらい生きづらさも対象になっています。
これは、現代人にとって重要なセーフティーネットといえます。
福祉サービスの利用料の設定
福祉サービスの利用をする場合、毎月利用料の支払いが求められます。
その金額は世帯収入で判断され、負担額の上限が事前に決められています。
従って、サービス利用の申請をした際に、自分がどこの区分に該当するかを確認しておくと良いでしょう。
現在の区分と上限額の設定は、以下の通りになっています。
・生活保護を利用している世帯…0円
・市町村民税非課税世帯…0円
・市町村民税課税世帯のうち収入が600万円以下になる市民1…9300円
・市民1以外に該当する市民2…37200円
この金額には、注意点があります。
サービスを利用した際の基本の利用料は上記の設定で負担範囲が決まりますが、交通費等の雑費に関しての負担はありません。
そのため、利用するサービス内容によっては追加費用の負担があることも覚えておきましょう。
以上のようなサポートを知らないままでは、せっかく対象になるサポートがあっても見逃してしまいます。
対象者になるならば、自分のためにも利用しない手はありません。
専用転職サイトの活用もアリ
本記事では、就労支援の基本知識をご説明しましたが、転職までの全てのサポートに特化している訳ではありません。
あくまでも、職場でのコミュニケーション訓練や能力開発を中心に行っています。
また、お住まいの地域や施設によっては、求人とのマッチングが手薄になっている場合もあるのです。
現在では、民間の転職サイトでも、障害者向けのサービスを充実させているところが多いです。
中には、就労支援もカバーした形で転職先を決められるサイトがありますから、求人とのマッチングをより優位にしてくれます。
また、転職サイトならではのサポートもありますから、公的サポートの就労支援とは違った発見もあるのです。
特に、障害者雇用に特化した担当者がサポートしてくれますから、実際に働く際に何が大切なのかをピンポイントで知ることができます。
もしかすると、公的サービスよりも効率よく自分の強みや弱みを確認することができるかもしれません。
早期の転職を実現したい、ある程度職種等の希望が定まっている場合は、転職サイトの就労支援を活用してみることをお勧めします。